【創作小説】君の為に僕は【4話】
◇◇◇◇
「お〜い!!フミ〜!!」
セミの声をバックにもう一つの声が届いた。
振り返ることもなく、それが松木だってわかったから、足を止めた。
「はよ〜!!暑いな〜」
優しくハハハと軽く笑った松木はすぐに俺の隣りに並んだ。
俺も小さく「はよ」と返事をした。
「あ〜、今日からテスト週間だよな!!早く終わってほしい。夏休みはたくさんの時間を練習にあてられるしな」
「松木って部活レギュラーなんだっけ?」
「え?いや、全然違うよ。めっちゃ補欠。でも練習して、早くレギュラー欲しいしさ」
キラキラとひたむきで良いヤツ。
少しひねくれてガサツな透とつるんでいるからか、松木の穏やかさが際立つと思っていたけど、それを差し引いても松木は優しい空気をまとっているんだなと感じた。
「……あ……っと、フミ……そのさ」
「なに?」
「フミって、トドロキさんと仲良いんだ?」
「……え、いや、ぜんぜん」
即答しようとしたのに、口調が妙に片言になってゆっくりとした言い方に聞こえたと思う。
それを誤魔化すようにすぐに言葉を紡いだ。
「小・中と一緒だったから何回か話したことはあるけど……まぁ、同中のヤツらと皆同じで別に特別仲良いとかじゃない。てか、なんでまた?」
今度はあえてゆっくりとした口調を意識したけど、松木の質問の意図に興味津々なことまでは隠せなかったと思う。
松木は特に俺の言動に突っ込みも入れずに「実は…」と話し始めた。