【創作小説】こんとんのはな【第4話】
◇◇◇◇◇
「あ、お嬢!!おかえりなさ〜い!!」
家に帰ると槐があの人懐っこい笑顔で出迎えた。
「…………お店は?」
花寿美は食卓に既に並んでいる食事を眺めながら聞いた。
「すみません、お店はちょっと早めに閉めちゃいました。夕飯作りましたよ〜。もう喰いますか?」
「……」
普段の家事全般は花寿美が一人でこなすが、悪夢を見た次の日は槐が必ずご飯を作ってくれる。
「だいたい、あなたは食事する必要ないじゃない」
「確かに主食は夢ですけど、嗜好品感覚で俺だってご飯を楽しむことぐらいできますよ。たまになんすからお嬢付き合ってください。ね?」
「……」
そして悪夢を見た次の日の槐はできるだけ花寿美の傍にいようとする。
「槐……」
「あ、もう食べるならすぐ準備しますんで。制服着替えてきてください」
「……」
お礼を言おうと少しだけ息を吸った。
「ん?どうしました?」
「あの……」
キョトンと不思議そうに花寿美を見たあと、ニヤリと笑った。
「……着替えの方も手伝った方がいいすか?」
「……」
馬鹿らしい冗談に呆れた花寿美は暖簾をくぐり台所をあとにして二階の自室へ行った。
「……お礼……また言い損ねた」
溜め息に似た独り言が溢れた。