駿心の小説置き場あれこれ

創作した物語を綴ったり、好きな作品を呟いたり(未定)

【創作小説】こんとんのはな【第9話】

◇◇◇◇



「日下さん、また欠伸。昨日ちゃんと寝た?」



洋の指摘に、途中の欠伸も無理矢理噛み殺した。



「え〜、また夜更かし!?何!?勉強のしすぎ!?」

 

「……うぅん、大丈夫」



天音にも心配されてはいけないと、欠伸を誤魔化すように鼻から深く息を吸った。

 

放課後の生徒会室。

 

生徒会長もおらず、二年生だけで残っている仕事をやっつけている。



「まだ水曜なのに大丈夫!?平日ど真ん中!!花寿美、死んじゃうよ!!」

 

「寝不足ぐらいで死なないわ」



天音の大袈裟な表現に花寿美は冷静に言いつつも、少し笑った。



「あ、そうだ!!」



天音は本当に良い事を思い付いたように明るい表情にした後、洋に向かってニヤついた。



「もう体育祭も終わったことだし、しばらくは雑務だけじゃん?今日の分の仕事は私一人で大丈夫だから、錨くん…花寿美のこと家まで送ってあげなよ!!」



天音は洋に向かって軽い目配せをして笑ってみせる。



洋は一瞬何のことかわからずに首を傾げて天音を見つめ返したが、天音が気を利かせようとしている意図を読み取り、驚きの声を上げた。

 

洋と違い、花寿美は意味がわからないまま二人を見ていた。



「花寿美も『中途半端な時に仕事する方が効率悪い』ってよく言うじゃん?」

 

 

「でも……」

 

「これでもっと体調崩されて学校休むレベルで本当に具合悪くなられちゃ私だって困るしさ!!ね?」

 

「……じゃあお願いしようかな?」



花寿美の返事に納得した天音は嬉しそうに何度も深く頷いてから花寿美と洋の背中を押して生徒会室を追い出した。



「わ……、天音」

 

「じゃあね〜」



指だけでヒラヒラと挨拶をした天音はすぐに扉を閉めた。



自分達の意思ではなく無理矢理廊下で追い出された二人は顔を見合わせた。

 

すると洋が先に「ふふっ」と短く笑った。



「…………なんか天音がゴメンね。あの子、一年生の時からああした強引な所があって。根は良い子なのはわかるんだけど」

 

「うん、俺にもわかるよ」



洋な柔らかな笑顔に花寿美は少しホッとした。



「じゃあ、帰ろうか」

 

「あ……錨くん。別にちょっと眠いってだけで熱もないし一人で帰れるから。錨くんも仕事残ってたんじゃないの?」

 

「……でもせっかくだから送らせて?」



花寿美の顔を覗き込んで「駄目?」と確認をしてくる。

 

心配してもらう必要はないが、一緒に帰らない理由も特にないので花寿美は了承した。

 

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